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社会に関すること、自動車、発達障害などを扱うブログです。社会ブログなのか、車ブログなのかよく分からなくなってきました。

日本のユニクロ化、経済成長だけを目指す国民

日本はいま「シンガポール化」が進んでいる:内田樹『街場の憂国論』vol.3

シンガポールといえば、マーライオン、お金持ちが移住するイメージ、ゴミにうるさい国のイメージがあった。別に間違いではないが、政治が事実上の独裁だなんてことは知らなかった。
男性の国民には2年の徴兵義務がある。苦痛を軍隊で与えることによって、政治批判をしにくくさせる効果はあるようだ。産業はかなり発達しており、アジアの中でも1人あたりのGDPが高い。日本と比べれば法人税も安くて起業しやすいということに関してはメリットが大きい。だから、ビジネスパーソンはすごく好む国だろう。

ただ、経済成長だけが本当に必要な指標だろうか?というと、答えは「ノー」である。お金だけあっても本当の意味でいい政策ができるとは限らないからだ。北朝鮮なんかの例で行けば、核を作っている金を国民に分け与えることで国民全体の貧困をある程度解消できるようなもんだ。まぁ、彼らは絶対やらないけどね。

内田:やっぱりオリンピック招致のときに「完全にコントロールできています」とか「0.3 ?以内」というエビデンスのないことを国際公約として口走ってしまったわけで、あれに関してほとんど国内的に野党からもメディアからもほとんど批判がなかった。

その後すぐ東電が否定したわけですよね。「そんな事実はありません」と。

言わば国際公約として公然と嘘をついたわけだけれども、それについて誰も咎めないという、この節度のなさに僕ちょっと仰天するんですよ。

要するに五輪を引っ張ってきたと。これで経済効果3 兆円とか100 兆円とかいって、金になるからいいじゃないか、金になるなら?も方便のようなことで国民がバーッと流れていったわけですよね。



なんらかの経済効果があれば、給料が上がる傾向にあるので国民は喜ぶ。ボーナスが上がれば、いろんな贅沢ができる。別にそれは悪いことではない。ただ、国民の何割がその恩恵をもらえているのだろうか?明らかに非正規雇用などの人はその恩恵を受けることはできていないのではないだろうか。
正社員でもろくにボーナスなんか出やしない!っていう人も少なくないはず。表面上は金で解決できそうな問題に見えるのが本質を見にくくしている。
景気がよくなっているように見えるところで、いまだ低い待遇で働いている人が4割もいるということを把握してもらわないといけない事実だ。

みんなが割とこれからの日本社会をどうやって作りなおしていくのかっていう。

さっきの原発再稼働もそうでしたけど、結局まず金だっていう話になった。金がなければ話にならないっていうところでずっと流れていってしまって、結局どうやって成長するんだ、どうやって発展するんだって話になっていきましたよね。

これはメディアの誘導が大きかったと思うんですけれども、去年の衆院選でも今度の参院選でも、街頭インタビューで街の人に聞くと政治に何を期待しますかって聞くと、100 人中90人ぐらいの人が「まず経済ですね」って言う。「経済何とかしてほしい」ってことを言う。

もちろんそういうことを言う人もいるんですけれども、そういう人だけを選んで世論を形成してきたなっていう気がするんですよね。

とにかく経済成長さえすればいい、経済発展さえすれば全部の問題解決するんだっていうのは、ある種の政治に対する思考停止なんですよね。

金さえあれば諸矛盾は解決できる、だから金儲けの方法を考えようじゃないかっていうね。



実を言うと、自分もある程度この発想でものごとを考えていた。ただ、金だけを追い求めているとどうしても矛盾してしまうようなことが出てきてしまうなという変な疑問もあったことは事実だ。だいたいの国民は矛盾する変な疑問を考えないようにしている人が多いのかもしれない。
内田樹先生はその疑問をあえて放置しないようにしていたのかもしれない。

(前略)今悪いけど日本人の90% は、日本国内の諸矛盾っていうのは全部金で解決できる問題だと思ってるんですよね。だから金なんだと。まず金だと。金さえ手当てすればすべての問題は解決するって思わされてると思うんですよね。(中略)

内田:グローバリスト、経済成長至上主義者の中には、目標をシンガポールだって言う人が多いんですよ。シンガポールが理想の国家だと。あそこは成功してると。

英語を公用語にして、法人税が安いとか、起業しやすいとか、成果主義実力主義でやってるとか非常に流動性の高い社会で、資源もほとんどないのに大成功してるというのでシンガポールが日本のモデルだってことを言ってシンガポールのようにしようって言ってる人が多いんですけれども、シンガポールって独裁国家なんですよね。

シンガポールのいいところを語る人はいっぱいいいるんだけれども、シンガポールの政治体制ってどうなってるかって誰も知らないんですよね、本当に。

あそこも60年代に独立してから基本的に一党独裁なんですよ。半世紀に渡って。



自分なりに学んでみたことをまとめてみると、「野党はあるけど、あんまり反対意見で出しゃばると逮捕される」「労働組合がない」「国内でうっかり政治の話ができず、野党を受からせると罰則を受ける」みたいな国だ。

日本に対して直接害がない分、問題が浮かび上がってこないのは当然かもしれない。特に、社畜が最高の価値観であるような感じの人は問題をミクロに捉える傾向(=自分や周りの人が(大)企業の正社員ならOK)があるので、アルバイトの立場の人などにやたら強く出てしまう傾向が顕著になりやすい。


国の主だった産業は、リーさんとリーさん一族が抑えている。だから「明るい北朝鮮」って言うんですけどもね。

蒲田:(笑) 本当だ、そんな感じですね。

内田:非常に金回りのいい北朝鮮っていう感じです。

ある種非常に効率的に動いてるんですけれども、というのはシンガポールっていうのは国是が経済発展なんですよ。

蒲田:ほうほう。

内田:国の目標が経済成長なんですよ。

政治システムも、社会のシステムも、教育も、すべて経済成長にプラスになるものでなければならないと。

★株式会社をモデルにした国の経済発展

内田:経済成長に役立つかどうかを基準にして制度設計の適否が判断されるという国なんですよね。これがたぶん自民党とかみんなの党とか維新の会の人たちにとって理想なんですよね。

あの人たちが独裁的な政体を指向してるのは、独裁制が好きなんじゃなくて、独裁制にすると金儲けが効率的に進むっていう、ちょっと本末転倒なんですよ。

蒲田:ほう。

内田:だから自民党っていう政党が、改憲案を読むとわかりますけれども、モデルにしてるのは戦前の日本じゃないんです。シンガポールなんです。

蒲田:はあはあ。

内田:シンガポールのシステムを導入したいと。

一党独裁で上意下達で、反政府的な言論があったり……民主主義、デモクラシーっていうのは金儲けの邪魔だって言ってしまうと彼らの語られざる本音なわけですよね。




なるほど。道理で民主主義というよりは、どこか独裁っぽいような感じのことをやっているんだな。特定保護法案なんかマジで独裁を進めるための土台だと感じるし。ネットで下手に情報を取ることも広げることもできやしない。
まぁ、早い話、株式会社日本でも作る気なのだろうか。

内田:特に国権主義的な人とか民族主義的とか愛国主義的な人間じゃないんですよ、上で引っ張ってる人たちっていうのは。経済発展至上主義者なんですよ。

蒲田:しかもそれをよかれとしてやっていますよね。

内田:心からいいと思ってやっていますよ。

蒲田:(笑)

内田:「金が儲かるんだよ、君たち。金が儲かったらみんなハッピーになるんだよ。だったら民主主義なんかいいじゃないか、なくったって。言論の自由も集会結社の自由もいらないじゃないか、金になるんだぜ。そんなのあるから金儲けがうまくいかないんだ」っていう発想ですから。

「反政府的な人間なんかみんな黙らせちゃえばいいんだよ、どうせ大して国富の増大に貢献してないんだから」っていう(笑)

蒲田:(笑)そうですね。それは善悪別にしてロジックとしては筋は通ってますよね。

内田:すごく筋通ってると思うんですよね。

だから彼らはまったく悪意がない(笑)。悪意がないっていうのが困ったところでね(笑)。心から信じてるんですよ。

蒲田:じゃあ国を株式会社のようにしちゃおうと。

内田:国のシステム全体を企業的なものにしようと。

蒲田:それはこの本の中にも書いてましたけど、国家百年の計とはかなり相反する理念ていうか概念ですよね。

内田:株式会社ってものすごく寿命が短いものですからね。

本に書いてある通り、アメリカの株式会社の寿命は5 年で、日本でも7 年って言ってるんでね。



要するに偉い金持ちというのは「自分とみんなに金が集まればいい」のであって、自分たちが死ぬころに国家が元気でやっていることなんかに興味はないのだ。もちろん、株式会社は本来であればもう少し長く考えたほうがいいのかもしれない。ただ、そこで作っているものや経営の方式などはどんどん変えていかなければいけない。
フジフィルムが食品薄膜の分野に手を出したようなことだ。あれは本当に判断がすばらしいと思った。当時対抗馬であったコダックはフィルムにこだわって会社がつぶれた。

内田:例えば公害の問題、環境汚染の問題だって短期的に考えれば有毒物質を川に流して、排気ガスも全部大気に流しちゃって、短期的に利益が上がればいいじゃないかと。そんなことやってたら5 年後10年後に大きな被害が出ますよって言われても、その頃はもうないしって。

俺ら退職金もらって会社辞めてるからっていう判断でやられてしまうと、5年後、10年後、30年後っていうスパンで日本の国民の健康とか国土の保全を考えたときには、短期的には儲かるけど長期的には損ですよっていうことはやってもらっちゃ困るんだけど、株式会社って長期ってのが5年ぐらいなんですよ。



究極の利己主義と言えばいいのだろうか。70のじいさんが40年後を考えることはまずない。110までいきていたらそれはもはや長寿番付の10位以内に入ることは簡単なのだ。たぶん、考えるとしたらぎんさんの娘4姉妹くらいパワーがある老人くらいだと思う。

(何かで賞金をもらったとき、老後の資金にするという言葉があった気がする。)

内田:市場離れっていうか、脱貨幣、脱市場の経済活動。

実際に非常に活発に物とか、情報とか、人間とか動いてるんですけれども、しかしそれはマーケットにはまったく出てこない。

貨幣も使わない。お金持ちになるんじゃなくて、自分と信頼関係の持てる人間的な顔のあるネットワークを作っていくっていうほうが、生き延びていく上ではどうも有利だっていうことを考え始めているんですね。

蒲田:ふんふん。

内田:自分の能力を売ってもどうせ大した給料はもらえない。

それだったらその給料をもらって、すり潰れるほど働かされて、夜中に帰ってきて、みたいな仕事はしないで、友だちのネットワークの中でのんびりと愉快な、ある程度快適な生活を過ごせる見通しがあるんだったらそっちの方がいいんじゃないかっていう賢い選択の方に、だんだんかなりの勢いで流れているって感じがしますね。



この非市場モデルを考えたのは日本一のニートで有名なphaさんがパイオニアじゃないかと思う。ひきこもりのプロの勝山実さんは国の制度をうまく利用しているタイプだ。もう少しビジネス志向にシフトすればイケダハヤトさんや日野瑛太郎さんあたりが該当するだろう。株式会社ニート、ひきこもり大学という一見ビジネスっぽく(?)見えるものも、実はこのモデルで共存していこうという姿勢だ。問題は、これらの非市場モデルがどのくらいの速さで動かせるかということだ。これは国民全員が過労で死んでからではまったく意味がないので、迅速にシフトしなくてはいけない問題だ。