漫画「ぜっしゃか!」は60代の車好きにこそ読んで欲しい
はい、車キチガイの自分が今回紹介する漫画、「ぜっしゃか!」についてお話していきたいなと思います。
舞台としては、私立四ツ輪女子学院絶滅危惧車学科という旧車をレストアする技術を学ぶための女子高が舞台です。
略して「絶車科」(ぜっしゃか)。
あまり車を知らない人が読むとだいぶ補足がないと読みにくいのでやや知識がある人向けの漫画であることは間違いない。
むしろ、青春時代をハコスカでブイブイ言わせてきたぜ!みたいな人が読むと懐かしくて涙が出るのではないだろうか。
「ガタピシ車でいこう」を読める方なら絶対に楽しめます。それは保証します。
ぜっしゃか!-私立四ツ輪女子学院絶滅危惧車学科ー(1) (角川コミックス・エース) [ せきはん ]
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実をいうと、この漫画を知ったきっかけがフォロワーさんからの紹介だったので、そのあと購入して自分なりに読んだ感想をまとめていきたいと思う。
紹介してくれたフォロワーさんの方でもこちらの本の紹介を行っているので
ぜひ。こちらは自分のようにマニアックな路線ではなく、心理描写などに重きを置いているような感じで書かれているので青春漫画として読みたい方はそちらをお勧めします。
【車好きの女子高生?いや、これ絶対60代でしょ。】
みなさん、最初に紹介される車種をご覧ください。
いきなりこれっすか!? あえておおまかにでも聞くスバル360とかじゃなくてこれをチョイスするの、マジでこの本だからこそだと思うんですよ。
自分の父親(63)が青春時代の車を全力で話しているときの感覚ですよ!
(ちなみに、父親は免許を取って初めての車が中古で買ったマツダ カペラの12Aロータリーです。YouTubeではRX-2とかで検索すると分かります)
しかも、「さすが巨匠ジウジアーロの作品ですね」って完全に女子高生の姿をした60代の車好きの発言だよ!
本当にこの車はデザインがかっこいい。
(ジウジアーロさん、実績がすごくて他に有名な車のデザイン何やっているかというと、Back to the futureの「デロリアン」とかが該当します。ほかにもいろいろあるので興味がある方は調べてもらった方がいいと思います。)
なぜ、自分が「これ、マジで60代じゃねえか!」なんてツッコミを入れたかというと、フロンテクーペというのはスズキ自動車が1971年~1976年くらいに作っていた自動車。
ということはですよ、最終型ですら42年前の自動車なんです。
しかも、今の軽自動車の660ccではなく360ccで運用されていた時代なのだ。
今、記事を書いている自分が28歳(今年で29歳)だ。
この「フロンテクーペ」をあえて前面に押し出す最初のチョイスがどれだけ渋いのかが分かってきたのではないだろうか。
スバル360とかみたいにもうちょっと有名な車ほど若い層も取り込めるのだろうけど、この車は本当に人を選ぶようなモデル(実用性・乗りやすさなど)なのであえてこれをチョイスしているというのは分かっているなと感じた。
今でいうなら、S660とかアルトワークス、コペン。もっとマニアックなところで言うならケータハムセブン160が該当するが、こんなの新卒のボーイがホイホイ乗りやすいか?というとちょっと人を選ぶと思いますよ?
(もちろん、今より装備は快適なので同じ土俵で話せるかどうかは微妙・・)
そう、ちょうどフロンテクーペが出てきているこの時期に免許を取り始める、中古車で購入する年齢層がだいたい今の60~70代がちょうど20~30歳というくらいに相当するんです。
青春時代に購入した新車、中古車ってだいたいマニアックにしろ人気のある車にしろ、年齢と年式ってだいたい固定されてくるのですよ。
その証拠として、自分の知り合いの先輩OB(現在45歳)が大学を卒業して趣味で乗っていた車が最終型セリカ(だいたい2000年ちょうどくらい)なので、22歳の時に新車かそこそこいい程度の中古で買ったとすればちょうど計算が合うことになる。
自分のように18年落ちのMR-Sをわざわざ購入して乗っている層もいるので厳密には当てはまらないかもしれないが、青春時代の車というのは本当にその当時の背景をよく見せてくれるものだということを実感した。
フロンテクーペについてもっと知りたい方はこの2つの参考文献があるのでぜひ目を通していただければより分かりやすいだろう。どうでもいいという方は、飛ばしてくれて構いません。
正直、ちょっとこのあたりはブログで説明するには長すぎる。
これはフロンテクーペができた時代のお話、スペックなどが書かれている。
360cc時代にしては最強の馬力を持っている実際の走行音です。
(当時の360ccは15ps程度だが、この車はグロスとはいえ37psあるのだ)
2ストですよ!本田宗一郎が大嫌いなやつです。
【女子高生とマニアックな知識の程よいハーモニー!】
脱線するの、本当に自分の悪い癖ですね。
この漫画がすごいところは、普通の車漫画っておっさんばかりが集まってえげつなくなりがちな所を普通の女子高生という要素をうまく調和させているところ。
おっさんだらけのマニアックな会話を聞くのが辛い人を取り込めるように作ってあるし、そのことを考えているからストーリーがほのぼのとしてすごく読みやすい!
車の知識を抜きにすれば、学園青春漫画としてもすごくクォリティが高い。
でも、この漫画は知識にも全く手を抜いていない。
今まで読んできた漫画はえげつないおっさん臭か、女子高生がワイワイやって中身にはそれほど触れていない学園青春ものの二極化をしていたが、これはほんとうにうまく調和点を見出しているんですよ。
女子高生がワイワイやっているだけかと思いきや、中身にぶち込まれるネタは完全に20代や30代では元ネタを調べないと分からないくらいの濃いものがじゃかじゃか出てくる。ふんわりとした味付けの中におそろしいほど濃い目のダシがしこまれているんです。
【現代から考えると異常にアナログな装備】
当然、360ccの車が開発された時代は1960年代、本当に三丁目の夕日が開催されたり、東京オリンピックが開催されてカラーテレビがやっと普及し始めてきたとき。
ということは、当然車の装備なんていうのは今に比べると非常にアナログ。
特にここなんて完全に旧車あるあるではないだろうか?
プロデューサーさん、手動チョークですよ、手動チョーク!
今時の女子高生が「あ、チョーク引くの忘れてたー!」なんて絶対言わん!
自分も手動チョークの引き方を実際にいきなりやれって言われたら無理。
ちなみに自分が乗ったことのある一番古い車は助手席限定であるが、父親が乗っていた550ccのクソボロいジムニーだ。(ターボがあるのでたぶんJA71型だと思うけど)
・窓は手動(くるくる)
・エアバッグなんてない。事故ったら死ぬ。
・パワステ?貧弱なことをいうな、己の腕力で回すんだよ
・当然MT車(というか、そもそもAT車の設定自体がなかった)
・カーナビだぁ?はぁ?
・鍵が完全に家の鍵と一緒みたいな形。
・(ボロすぎて雨漏り、助手席シートは破れて黄色いウレタンが露出)
・たぶん、エアコンはあったと思う
その水準ですら、チョークは自動になっていてレバーなんてついてないですよ!
手動チョークがついているってことはもうだいぶ骨董品のレベル。
もっというと、エアコンなんてついていないから夏は死ぬ。やばい。
さっき紹介したフロンテクーペは2ストのエンジンなので排気ガスがめっちゃオイル臭いも追加しておきましょう。
自分が乗っていた平成7年式のアルトが電子制御式キャブレターなのでオートチョークが働いて冷間時はめっちゃエンジンの回転が高くなり、温まると下がる仕組みになっていた。平成1ケタ台の軽自動車はかろうじてキャブレター式があったが、だんだん電子制御インジェクション式(以下、EFI)のエンジンに切り替わっている黎明期だったと思う。
今の車はそもそもキャブレターではなく、EFIを採用しているためそもそもチョーク機構自体がなくなっている。(制御で回転数は若干上げているだろうけど)
【制服まで当時のままを再現】
ちょっと待ってくださいよ、ブルマは記憶が間違っていなければ自分が小学校5年生くらいの頃で廃止になった記憶があるんですよ。
最近、まんがでも見たことはないけどこの作品、普通に再現されている。
あまり画像ばっかりアップすると楽しみがなくなるのでこれは実際に読んでもらってからのお楽しみでよろしく。
【絶車ファイル、明らかにプロの犯行】
この漫画で一番怖いのは話と話の間にちょこちょこ挟まれている絶車ファイルの内容だ自分も明らかに知らないような話がぶちこまれている。
ジウジアーロの案をスズキの社員が修正したみたいな話、知らねえ・・・
これはあくまで最初のものだが、この解説がないとあまりにもマニアックすぎてまともに読めない部分もあるし、ストーリーの流れをつかむためにもここはしっかり読んでおいておくと理解がだいぶしやすくなる。
車の形式番号などが当たり前のように出てくるので、慣れていない人はネット環境を準備しておくことをお勧めします。はい。
【あとがき】
ほかにもいろいろあるが、全体としての評価。
この一言に尽きます。