和英辞書・英和辞書の限界
三沢さんの記事のリンクから来た方へ。
今回の話はちょっと長いので覚悟してください。
「お前、何の参考文献使ったの?」という意見があると思いますので以下に参考文献を示します。
{引用した参考文献}
定義を引用した英英辞書:ロングマン英英辞典[4新訂版](電子辞書版)
解説用の日本語の参考用:ジーニアス和英辞典 第2版(電子辞書版)
:ジーニアス英和辞典 第3版(電子辞書版)
日本で言う評価ってrate(査定する・みなす)であって、evaluate(財産・資料・能力を評価する、見積もる)であることが多いよね…。能力うんぬんというよりも手続きや便宜やリスクを減らすために線を引く感じ。
— 三沢文也 (@tm2501) April 3, 2015
いや、rateもevaluateも「評価する」と言う訳だけど、「物事の価値を決める(evaluate)」というほど日本に於ける「評価する」が思考した営みにはとても見えないんだよなぁ…。どっちかというと評価=数値化、査定な感じ。
— 三沢文也 (@tm2501) April 3, 2015
いや、本来なら「rate」を使うのはおかしい局面だけど、僕が日本的ニュアンスを汲み取ると「建前上はevaluateと言い張ってるけど、これはrateだよね?」と。いう話が多すぎるわけでして。というよりも英語がわざわざ使い分けてる意味がわからん。評価するを意味する単語が多すぎる!
— 三沢文也 (@tm2501) April 3, 2015
このつぶやきを見て、「これが和英や英和の辞書の限界じゃないのかな?」ということを即座に感じた。
なぜかというと、自分の大学時代の恩師(卒研教員)がいっていたことを思い出したからだ。
自分はほかの講義の都合で受講しなかったが、その恩師の授業に科学英語という授業があった。
前提として言っておくと科学英語は普通の英語とは違い、専門用語が多い。ただ、世界中の人が読みやすくするため、文法は中学生レベルのものが多いので単語さえわかればとても読みやすい。
興味があれば、理系の英語論文を1つ読んでもらえればイメージがつくと思います。
受講していた友人から話を聞いたところ、「英英辞書を持って来いといわれた」と。
なんでだ?と聞くと「専門用語過ぎて和英辞書には載っていないし、そもそも論文とかで英語の厳密な定義を書くには日本語では対応できない。」ということらしい。
じゃあ、そこで考えることがひとつあるわけですよ。
なんで和英辞書や英和辞書ができたのかということだ。
みなさんはあまり意識はしていないと思うのだが、国語辞典というのは「日本語で日本語の意味を調べる」ことだ。広辞苑や明鏡国語辞典がかなり有名どころだ。
もし、アメリカ人向けに広辞苑もどきを書くとしたら「英語で日本語の定義を書く」ことになる。これが日本人が英和辞書や和英辞書を使っている感覚になる。
例えば、広辞苑に載っている日本語として割と使われている「うざい」を英語で書くようなことに相当する。はっきりいうけど、日本語ですら意味を厳密に説明しろ!と言われたらちょっと戸惑うかも。
母国語である日本語ですらこうなんだから、確実に習得度合の劣る英語で綺麗な説明が厳密にできるはずがないんですよ。ネイティブと同レベルに習得していても、文化が違うわけだしお互いの常識の前提も噛み合わない。
これから話をしますが、細かく書きすぎると自分も恩師も特定されてしまう可能性があるのでちょっとぼかします。
自分の恩師は、もともと海外で研究をしていたので専門分野の本を英語で書いた。
その著書を同じ内容のまま日本語訳したときに問題が発生したそうだ。
自分と同じ研究室の先輩が参考文献としてその著書を使うときに恩師に言われたのがこの言葉だ。
「英語の定義だから、日本語に直すと意味が違ってくる。日本語バージョンは訳の関係上、内容が違ってくることになるから参考文献に使うのは英語のほうを使え。」
これを聞いたとき、英語の翻訳って本当にシビアなんだなって思った。
決して、英語力がないとかそういう低いレベルの話ではない。なぜなら、学んだ英語力で英語圏のネイティブの教授と対等にコミュニケーションを取り、教鞭をとっていた人の話だからだ。英語を使う上での発音や定義とかがデタラメが一切通用しない世界だよ!
そのレベルの人が「これじゃ、厳密な和訳は無理だわ」とか言っているんだから恐ろしい話だよな。
ツイートの内容について話を進めていこう。
evaluateとrateの違いを和英辞典や英和辞書で見ると、ツイートで言われてるようなことは間違いない。似たような単語として、estimateやvalueもあるのだが日本語のニュアンスで理解しようとすると曖昧になるし、ある程度は通用してしまう。
かなり長いので、読むのが面倒ならグリーンの文字までスクロールお願いしますぜ。
定義を調べるのにクソ時間かかりすぎて死ぬかと思った。
evaluate の英英辞書での定義はこうだ。
to judge how good, useful, or successful somthing is =assess
訳すと「(評価対象が)どのくらい良いのか、便利なのかを判断する」
どうやら、意味がassessと一緒のようなのでこれも一緒に調べてみる。
・ assess(2つ意味があるようです)
① to make a judgement about a person or situation after thinking carefully it
= judge(判断する)
訳すと「人や場面について慎重に考えたあとに判断を下す」=judgeと同じ
どっちかというと①は人間の主観などが強いほうの判断。
judgeと意味が同じらしいので、一緒に絡んでくるこの定義も見ておこう。
・judge
(A) opnion(意見)での使い方
to form or give an opnion about someone or something after thinking carefully about all the informaton you know about them
「あなたが知っている、人や何かについて慎重に考えたあとの情報について意見を与えたり、まとめたりすること」
(B)used to say that you are making a guess based on what you have just seen, heard, or learned
「あなたが見たこと、聞いたこと、学んだことだけを基礎にして推測をたてることを言うものだった。」
=積み重ねた過去の知識を頼りに推測し、(意見を)言うこと。
これ以上やるとキリがないのでjudgeはここまでにする。
② to calculate the value or cost of something
訳すと「何かのコストや価値を計算すること」
こっちのほうは数字に換算して物事の判断をして見積もる。
rateの英英辞書での定義はこうだ。
なんか、こっちは結構定義が多いな。
① to think that someone or something has a particular quality,value, or standard
「人や物における個々の質、価値、基準を考えること」
例文:The company seems to rate him very highly (= think he is very good).
「会社は彼をとても高い基準(価値)で考えているように見える」
⇒彼は会社でとても良い評価だと考えている
②(正式ではないイギリス英語での使い方)⇒これは具体例だと思う
if you rate someone or something, you think they are very good
「あなたが誰かや何かを評価するならば、あなたはそれらを良いと考える」
③ rate sb's chance⇒sb'sは「人の」とかいう意味らしい。
「人のチャンス、機会を評価する」(イギリス英語)⇒具体例
if you do not rate someone's chance of achieving something, you do not think that it is likely that they will achieve it
訳:「もしあなたが誰かの物事の達成の機会を評価することがなければ、彼らが達成するだろうということを多分考えないだろう。」
④(非正式なアメリカ英語) to deserve something
「何かの価値があること」⇒微妙なところ・・・・
⑤be rated G/U/PG/X etc
⇒面倒くさいので日本語で説明すると「18禁」とかの年齢表示基準。
{読むのが面倒な場合はここまでスクロールしてください}
これらの2つを見ると、似ているといえば似ているんだけどevaluateの方がasseseと意味が近いところがあり、裁判や数値評価で使うような「堅い印象で使う言葉」な感じがする。
今までの知識とか実際の数字、人生で使った経験などを元に定量的な評価をする場合がevaluateの使い方だと考えたほうがいいのかもしれない。
実験や調査などの書類上ではこっちを使うことを推奨する。
rateのほうは人を「良い・悪い」で判断しているという点では同じだけど、通信簿とか会社の査定のような人の雰囲気や立ち振る舞いを見て評価している点が大きい。
こっちのほうが非言語的なものを含んでいると言えばいいだろうか。
「あー、あいついい奴だな」とかで評価するのがrateの本質。
勿論、英英辞書をちゃんと使えるためには英和辞書や和英辞書で基礎の英単語力+日本語の対応イメージがないとまったく意味がないので、英和辞典や和英辞典を軽んじてはいけない。
英英辞書は丁寧で厳密なんだけど、最低限の単語力がないと使えないんだなってことがわかった気がする。
結局、母国語の表現力・理解力がついていかないとせっかく外国語を勉強しても理解できないということになってしまう。自分も英英辞書だけでできるかと思っていたが、ある程度は和英辞書に頼ることになってしまった。
大まかな理解をするには日本語の助けは絶対ほしい。でも、日本語だけでは説明できないから英語の定義を勉強して始めて、似たような単語の細かい区別がわかるんだなってことが今回のことでよく分かりました。
余談ですが、これを書くのに4時間かかった上に4300文字近くまで増えるという恐ろしい事態になっていた・・・ やばい。