職場定着サポートが根付きにくい理由
就職支援という言葉は結構聞くと思う。だけど、その人が就職したあとにサポートをする業界があるか?と聞けば、ほぼ即答で「ノー」と答えるしかない。
実質、今のところ就労を続けるという観点で支援が機能しているのは「労働ユニオン」という個人で入れる労働組合ぐらいのものだろう。
じゃあ、具体的に職場定着のサポートってなにをやればいいの?という疑問が来るはずだ。
今の日本の職場環境をふまえて答えるならば、自分は「内政干渉に近いようなことをやる必要がある」と答えたい。まぁ、内政干渉という言葉から聞いてものすごく不穏当なイメージを浮かべられた人もいると思うのでもう少しちゃんと説明したいと思う。
内政干渉に近いというようなことというのは「通常に考えて、まともに働けるような環境がなければそれに対して改善を求める」 この1点だ。
例えば、上司や同僚が明らかに人格を否定するような暴言を吐いているとか、残業代を払う気がないとか、施設の構造上危ないのに放置しているとかだ。
団体交渉権を持っている労働ユニオンは労働者が所属しない限り、動くことはできない。最近はそれでも知名度が上がっているとは思うが、労働環境はいまだに是正されていない。もし、全体として動いているならまともに働ける社会ができているはずだからだ。
もっと大きい組織である労働基準監督署は、圧倒的に人手が足りていない。
労働基準法というのは昭和29年にできたそうだが、自分の親が働いていた高度成長期時代にはろくに機能していなかったそうだ。ある程度儲かっている時代だったし、自分もそれなりに安定している職業につきやすい状態なので気にしようとも思わなかったのだろう。
給料が安くて休みがなくても、どこもそんなもんだって考える雰囲気がそれを助長していたらしい。(おそらく、「社会は厳しい」とかいう話が出る原因)
24時間働けますか?なんてフレーズが出たが、本来の労働法から考えればレッドゾーンな話だったのだ。
ひどい職場を改善するには、職場Gメンなんてものがあってもいいんじゃないかなということだ。今のところ、それに近い労働基準監督署は力がないとは言わない。だが、いつも職場を監視しているわけではないから、見えないときは見えないし、労働者が必ずしも証拠をうまくつかめるとは限らない。だから証拠をつかむために滞在して手伝いをできる権限のある施設がほしいのだ。
機密保護の関係があるので、そのまま採用するのは難しいのかもしれない。
あまりに様子がひどいようであれば、それくらいの権限を持たせるような体制を作らない限りなんの意味もないんだよね。
今の日本の労働環境は「ガキ大将とその取り巻きが個人をリンチしている」のと変わらない。だから警察がパトロールしているのと同じだよ!ということだ。
まぁ、それ以上にイカレタ働き方をさせている所が多すぎて裁ききれないっていうのもあるんだけどね。
あと、もうひとつ言いたいことがありますよ。
環境を無視して人を判断するやつが多すぎるんですよ。本人の状況が見えないのはある程度仕方がないところ、あるのは仕方ない。
ここ最近を見ているとどうも、自然災害以外は「個人の要素・努力」だけでなんとかなると思っている輩が多い気がする。いや、多すぎる。
職場定着サポートがうまくいかないというのにも、こういった理由がちょっとばかり関係しているはず。
例えば、ひどい職場に耐えられなかったということで退職した人を「普通から考えたらとんでもない職場だ・・・」というより、「そういう人や環境を受け止めて、うまくやるのが社会人でしょ?」とか素で思うタイプが多数なのですよ。
職場によっては、体力や技術が必要だという場合は普通にありうる。ただ、それを打ち消すような環境があったりする。月400時間労働だったり、28連勤とかで健康を害してでも働かされ、挫折したものを「こいつはどう考えてもうちでは持たないし、職場に文句を言いそうなやつ」と判断できるセンスはどうやって作られたのだろうか。
逆に言えば、そんな環境でも平気で持つ・持たせてしまうことを前提で回っている社会でデータ上の失業者が10%を下回らないということがいびつなのに、それに文句を言うことがいけないみたいなことになっている。
だから、なんとか耐えて働いている人は弱い立場である無業者に対して、「必死に働けばなんとかなるだろう、自立できるはずだよ」とかいう言葉を当然のようにふっかける。含まれているニュアンスはなんだろうか。無意識にこの言葉を使っている人は考えて言っていますか?
あなたがこの言葉を使っている前提は何ですか。
時給の低い非正規でも長い時間働いたり、掛け持ちすればそれなりに額面はごまかせるからぎりぎり税金と光熱費、家賃くらいは払えるだろうということか?
体を壊すような働き方でも耐えられないようではいけないのか?
あきらかに会社が法律を犯していて、今まで就職できなかった自分に罰を与えるつもりでそんなことは無視して働けということなのか?
経済的に自立さえしていればいいのか?職場環境のせいでうつ病になって家に戻ったら、家族に「甘やかしてる」とバッシングすることが正義だと思っているなら、ふざけるな!
大学を出ているなら、非正規になんかなるほうがおかしい? たとえ、正規になってもまともな労働環境になるかどうかは運しだいなのよね。
(まぁ、これはブラック職場よりもエリート職場のタイプが言いそうなことだけどね)
それができないのは自己責任なのだろうか。大手銀行とかに入って、一新入社員が仕事のできだけで職場環境を変えるなんて、到底無理な話だよ。たとえ、成果がよくても戦う相手が悪すぎる。
少し上の世代なら、「普通に働ける正社員」は普通の意識なら誰でも簡単になれると思っているという人が多い。
もうね、断言するけど「普通に働ける正社員」の枠は企業が減らしてるし、たとえ景気が多少上向いて枠を増やしたとしてもその枠に入る基準というものはあえて厳しめにしてある。正社員の人件って費高いんだもん。
では、逆に入社としてはハードルの低い人手不足の業界は、基本的にまともな職場を提供できていない(もしくはしない)。それを個人の忍耐力、努力不足のせいにするのは違うだろうということです。
職場定着ができない原因を個人に求めるんじゃなくて、じゃあ、なぜ誰もが適応できるような職場にしないのか?ということを考えるべきなんですよ。
「俺たちはこの時代に長く働いて、かつ経済発展に貢献した!そして、そんなむちゃくちゃな環境でも誰も文句を言うやつはいなかったんだ!!」と言いたいのはわかりますよ。
この無茶苦茶な環境に対して、リターンが帰って来ていた頃は奇跡的に運がよくてその場を勢いでごまかすことはできていただけなの。 だけど、2000年代に入ってきて派遣が解禁になった頃くらいからごまかす限界を超えて破綻してきていることを分かっていない。もしくは、自分には関係ないといって見向きもしなかっただけ。
それでも、お前が悪いというのなら、もう勝手にしてください。
だから、これからは職場定着をさせるための仕組みを個々の会社で考えていかないといけないんですよ。早い話、未来工業とまでは言わないけどそれに準ずるくらいの環境が必要です。そのためには経営者、指導者、国民の意識が変わらないと難しいんだけどね。そのために東奔西走しておられる支援業界の方々には、いつも頭が下がる。