マイノリティ雑貨店

自動車、発達障害などを扱うブログです。最近はQMAにはまっています。

石油の「蒸留」のお話

車のガソリンや、ボイラーの燃料は原油から作られている。でも、おもに中東などで取れる原油というのはすごく粘度や引火点が高くて到底そのままじゃ使えないわけですよ。じゃあ、どうするかっていえば蒸留塔というものを使う。

原油は単品で出来ているわけではなく、ガソリンやナフサ、灯油などのいろんな石油製品がグチャグチャに混じっているわけだ。このままじゃまともな燃料として使うなんてできるはずがない。

含まれている各成分はすべて沸点や性質などが違う。沸点が違うということは、2つの物質を分けることができる。酒(エタノール+水)が分かりやすい例になるので紹介しよう。

エタノールの沸点は78度。水の沸点はみなさん御存じの100度。78度の時点ではまだ水は沸騰せず、期待として出ていくのはエタノールの蒸気のみだ。

液体として含まれているエタノールがすべて蒸気になると、残るのはアルコール分のない純粋な水だけ。蒸留ということの仕組みはおおまかにこんな感じだ。

石油で言うなら、重油より沸点の低いガソリンが先に気体となり、重油が残ることと一緒。原油の蒸留というのはアルコール蒸留より品物が多いだけということだ。
(本当はもっと面倒だけど、説明が煩雑になるのはこのコーナーでは避けたい。)

原油を分離すると沸点の低い物質から上へ行く。沸点は炭素鎖の少ない物質ほど低いため、ガスとかそういったものがまず優先的に登っていく。(比重の関係もあるが)

上から分離されるものをどんどん書いていこうと思う。

1:石油ガス(LPガス
LPガス=Liquid Petroleum Gas(液化天然ガス)のこと。真ん中のPは「石油の」という意味。主成分はメタン(またはプロパン)のため、とても軽い。沸点が一番低く、常温常圧では気体なのでガスタンクで圧縮して使う。

2:ナフサ・ガソリン
だいたい沸点が30〜180℃くらいのところで分離される。炭素鎖の数がだいたい4〜10程度の混合物。分離されたガソリンやナフサの中にも沸点の違うものが混ざっている。沸点が120度くらいのものはシミ抜きなどで大活躍のベンジンがある。同じ分離系統の中でも自動車用(または航空用)のガソリンはナフサとは違う基準で選定されている。ガソリンは本来、無色透明なのだが灯油と間違えないように暗いオレンジ色に着色している。
ガソリンスタンドのハイオクというのは、オクタン価が96%以上のものでありレギュラーガソリンよりも燃えにくいため、ノッキングを起こしにくい。
(ノッキング=混合気がエンジン内で異常燃焼を起こし、内部の金属にダメージを与えてしまうこと)

3:灯油・ジェット燃料
沸点が170〜250度とやや高くなっている。だいたい炭素鎖の数が9〜15くらいの混合物。ガソリンと違い、揮発油税がないため、安い。ジェット燃料は灯油に近い「ケロシン系」のものと、灯油湯にナフサ系の成分が入った「ワイドカット系」に大きく分けられる。引火点がガソリンと違い、40℃くらいのため常温で引火するようなことはない。ただし、燃えてしまった場合、若干消しにくいので注意。本来、ケロシンというと灯油全般のことだが、日本でケロシンと言うのはだいたいジェット系の燃料のことである。

4:軽油
沸点が240度〜350度くらいのもの。炭素数は10〜20程度。灯油と性質は遠くないが、若干こっちのほうが燃えにくい。そのため、不正軽油には灯油と重油を混ぜたものが使われる。(よい子はマネしないでね!)
引火点は50度くらいと高いため、ガソリンエンジンにぶちこんでもまともに気化しないのでエンストする。ガソリンに比べて炭素鎖が多いので熱効率がよく、大きな力を必要とするRV車やトラック、バスなどで多く使われる。


5:重油・アスファルト
沸点が300度以上の残油留分のこと。粘りの少ない順に、A重油、B重油、C重油がある。重油という名前だが、ガソリンとかと比べて重い程度なので、水よりは軽い。大型の機械の動力や船のエンジンの燃料として使われている。若干硫黄が入っているため、燃やすと硫黄酸化物が出てくる。
アスファルトは残油留分のなかでも最も粘っこいやつであり、道路の舗装に使われる。液体というよりはもうほとんど流動性のない固体に近い。

どうでもいいけど、A重油と灯油には脱税防止のためにクマリンという物質が入っている。だから不正軽油でクマリンが検出されるとつかまります。

クマリンを取り除くには硫酸を使う必要があり、出てくるのは硫酸ピッチという猛毒物質。山の中にドラム缶が捨ててあったらだいたい不正軽油がらみ。
まぁ、本来クマリンっていうのは桜餅の香り成分。